ABU2006感想その3 ~ベトナム戦で何があったのか(後編)~

ベトナムに勝てるかどうかのポイントはただ一つ。それは、進入禁止ゾーンを飛び越えて突っ込んでくるベトナムの妨害マシンから、こちらのハイウェイゾーンに伸びる竿を止めることができるかどうか。他のマシン構成からして、この妨害マシンさえクリアすればこちらが勝つ確率が高くなります。


飛脚を予選と同じゆっくりモードで走らせれば、確実に相手の妨害が仕事をしてしまうので、本来のスピードで走らせるしかありません。実は、ベトナムの国内大会の映像はかなり初期の段階で入手しており、対策もできていたつもりでした。ベトナムの妨害マシンがABUに向けて大幅なスピードアップでもしていない限り、飛脚に施した改良で勝てるはずでした。ただそれは本来のスピードを出すことが大前提です。しかし本来のスピードを出せばスリップしてアームがうまく伸びてくれない可能性が高いことは前日の試走でよくわかっていました。アームを伸ばさずに走るだけというのも考えましたが、それでは相手の妨害の邪魔をうまくできる可能性は低く、本来のスピードで走りつつアームで妨害マシンごと押しもどすしか方法はないという結論になりました。


そこで苦肉の策として、飛脚にブロックを積まずに走らせてアームを伸ばすという方法をとることにしました。ブロックを積まなければ重心が低くなり本来のスピードを出してもスリップはしにくくなり、アームもバランスを崩しにくく、ちゃんと伸びる可能性が高いからです。


そして本番。実は本番で僕が致命的なミスを犯していたことはここで初めて告白します。予選のときはマシンのセッティングにピットクルーの手を借りてもよかったのに、今回はそれはだめで、メンバーだけでセットしろといきなり言われて、少々慌てていたこともあり、やらなければいけないことを一つ忘れてしまいました。


飛脚のスタートスイッチは、誤動作を防ぐためにセッティングが終わった後一度「セッティング完了スイッチ」を押しておかないとスタートしないようになっていました。その「セッティング完了スイッチ」をセッティングの時間に押すのを忘れていたのです。その結果、スタートの合図でまずセッティング完了スイッチを押して、そのあとスタートスイッチを押してスタートという形になってしまいました。ほんの一瞬ですが、致命的な一瞬でした。あの時飛脚のスタートが気持ち遅かったのはこのためです。


これがなければ結果が変わっていたかどうかは、今でもはっきりとはわかりませんが、ベトナムの妨害マシンが一足早く妨害竿を伸ばし、そのあと飛脚がアームを伸ばす形になってしまったため、完全にこちらの作戦は失敗しました。


もう一つの誤算は相手の妨害マシンが、こちらが予想していた地点より少しずらした進路をとってきたことです。そのせいで余計に止めづらくなっていました。ところが、そのおかげで飛脚は相手の妨害マシンより遅くついていたにもかかわらず、そのあと普通にアームを伸ばして、中央のスカイブリッジまで普通に延びていたわけで、つまり普通にブロックを積んでいれば勝てたということです。


ベトナムは妨害マシンの進路をわざとずらしたのか、マシンの仕様でそもそもあれくらいのずれがあったのかはわかりませんが、こちらの戦略を読みきって直前に進路をわざと変えたのであれば、もう参りましたとしかいえません。


ベトナムの妨害マシンが完璧に決まり、結局飛脚の妨害もモアセンサーの妨害も完璧に決まりました。双方とも互いにハイウェイゾーンの出口を完全にふさいだので、この時点でスカイブリッジへの得点は困難になります。あとは手動の勝負+1点ゾーンの勝負です。


ところが太郎にはハイウェイゾーンの中から1点ゾーンに得点する能力がありません。一方ベトナムの得点マシンはこれでもかといわんばかりにどんどん1点ゾーンにブロックを積んでいます。この時点で負けました。太郎はリトライで、力ずくで何とかベトナムの竿を突破しようとしますが、だめでした。


モアセンサーはファンを吹きますが、ABUではファンは常識で、対策も確立しており、もはや効き目なしです。そして追い討ちをかけるかのように手動が操縦ミスでブロックを自動ゾーンに落としてしまいます。完敗でした。


中には接戦だと感じる人もいるかもしれませんが、完敗です。絶対に勝てない相手というほどでもありませんが、今回に関してはマシンの完成度も戦略もアイデアも一枚上手でした。ABU3回優勝の大学の実力は本物です。


でも忘れないでください。次やる機会があったら、絶対にこの借りは返します。多分。後輩が返してくれます。


 


ktia

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